高音ボイトレ 練習編(ミックスボイスの音程移動)

ボイトレ練習
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前回の練習編(ミックスボイスの声質・共鳴)では、響きや共鳴の説明と満足する声質に近づけるための練習を説明しました。今回は、音程移動の練習です。

以前の「高音ボイトレ 導入編」の記事で以下の練習方法を紹介しました。

  1. 裏声の強化
  2. ヘッドボイスの発声
  3. ヘッドボイスと地声をつなぐ(ここでミックスボイスが発現)
  4. ミックスボイスを響かせる場所を探る
  5. 地声とミックスボイスの音程移動練習

今回は実際の歌で喚声点付近をスムーズに移動させるための「5.地声とミックスボイスの音程移動練習」について説明します。今回で予定していた記事は最後となります。

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ミックスボイスを歌に使えない

ミックスボイスがロングトーンで出せても、初めの頃は実際にカラオケなどで歌ってみるとうまく使えない状態に陥いると思います。

前回説明したように歌に使えない主な原因は以下です。

  • 喚声点の前後(上下)で声質が変わってしまう
  • メロディーが喚声点付近を通過するときに発声がおかしくなる

前回の記事では一つ目の原因を解消するための声質の改善を中心に説明しました。今回は、喚声点付近の音程移動をスムーズに行うための練習方法について説明したいと思います。

音程移動時の症状

僕がミックスボイスを出せるようになって試しにカラオケを歌ってみたんですが、喚声点付近の音程を移動したときに以下の症状が現れました。

  • 喚声点前後で声質が極端に変わる ←地声とミックスボイスの境界
  • いきなり高音だとミックスボイスを出せるが、地声から徐々に喚声点を越えていくメロディーだとミックスボイスにならず地声のままで結局出ない。 ←地声からミックスボイスへの移行
  • 喚声点を越えていくときにミックスボイスで出すことに成功しても、降りてくるときに力が抜けた状態になりまともな声が出ない ←ミックスボイスから地声への移行
  • 音程を激しく動く場合、声が制御できずムチャクチャになる。←細かい制御

各症状を一言で表したものが矢印の後ろ側の言葉になります。各症状を順に説明していきます。

地声とミックスボイスの境界

前回の声質・共鳴の地声とのつなげ方でも説明しましたが、音程移動に関わる部分をもう少し説明します。

この「高音ボイトレ」では、記事全体で一貫してミックスボイスのことを以下のように表現しています。

「ミックスボイスは地声の一種です」

つまり、境界はありません

でも実際に歌うと境界がありますよね。それはまだミックスボイスが完成していないからです。記事を書いておきながらですが、僕もまだ完成していません(徐々に完成に近づいている状態)。

ミックスボイスを使えるようになった当初は、次のように歌ってませんか?

「今まで出ていた音域は地声で、高音になったらミックスボイスで」

これは間違いです。全てミックスボイスで歌います。ミックスボイスは地声、裏声と同列ではなく、「地声をミックスボイスの手法で歌う」が正解です。その結果、今まで出なかった高音が地声で歌えるようになります。

「えっ、でもどうやって?」と思われるかもしれませんが、始めた当初は細かい制御が出来ていないので境界があるような声に聞こえてしまいますが、下の図を思い出しながら次のことを意識して歌ってください。

披裂筋類の強さと声質の変化のグラフ

  • 喚声点から離れた下の音域は限りなく地声に近い(披裂筋類の強さ100%)
  • 喚声点に近づくにつれ徐々にミックスボイスの領域に入る(徐々に披裂筋類を弱めていく)
  • 最高音ではヘッドボイスになる

音程を中心に図を作り直しました。

披裂筋類の強さと声質の変化を音階と比較した図

ミックスボイスが歌えている状態では、喚声点(地声最高音)より少し下の音域では既に披裂筋類を弱めており、今までの単なる地声とは異なる声質になっています。今までの地声の最高音もミックスボイスで発声していることがよく分かります。

まだ自由にミックスボイスを発声できない初期は、以下のことを意識して歌うとコツを掴みやすいと思います。

  • 喚声点の少し下からミックスボイスを始めるようにする
  • 高音になるにつれて徐々に声を軽くする(ある音程でいきなり発声方法を変えるのではない)

次の章以降で説明する練習方法も境界の解消に有効だと思うので、そちらも見てください。

地声からミックスボイスへの移行

低い音域から高い音域に移行に有効な練習は、前回記事の声質・共鳴の「地声とのつなげ方」そのままです。練習方法の要点は以下です。

  1. 楽に出せる音程の地声を発声
  2. 発声したまま音程を上げていく(音階はつけず一気に上げる)
  3. 喚声点付近でミックスボイスになり、そのまま自分の最高音まで上がっていく
  4. 最終的にヘッドボイスになる

先ほど説明した通り、喚声点より少し下では既にミックスボイスの領域に入っていることが望ましいので、そのことを意識して練習してください。

披裂筋類の強さと声質の変化を音階と比較した図

メロディーにのって歌うとうまくいかない場合は、喚声点より少し下からミックスボイスであることを意識すると改善すると思います。今まで地声で歌っていたからといって今までの最高音を今までの地声で歌ってはいけません。今までの最高音より前にミックスボイスで発声していることが重要です。そのまま喚声点を越えていきましょう。

例えば、「あいうえお~ (間が空く) かきくけこ~」のメロディーがあったとして、さびの最高音が「けこ~」だったとします。その場合、「か」から既にミックスボイスであると強く意識して「かきくけこ~」と歌えばスムーズに最高音を出すことができると思います。

ミックスボイスから地声への移行

低い音域から高い音域に移行するよりも、高い音域から低い音域に下がるほうが難しいと思います。僕も最初は苦労しました。

ミックスボイスの領域で音程を下げる場合、披裂筋類の強さを強くしないといけません今までの地声の発声だと「低音は楽に出せるが、高音は力を入れないと出ない」状態だったと思います。何十年もこの状態でした。

高音を出そうとしているときは意識してミックスボイスの発声を行いますが、音程を下げるときは無意識に力を抜いてしまうことが原因で発声が破綻してしまうんだと思います。ミックスボイスでは音程を下げるときに逆に力を入れないといけません。(無理に力を入れる訳ではなく披裂筋類の働きを強める意味ですよ)

けど頭では理解してても、なかなかできませんよね。

これは慣れるしかありません。慣れさせる練習を行います。

先ほどの地声からミックスボイスへの移行の逆を練習します。ただ、いきなり最高音から始めるのは難しいので、先ほどの1~4を行った後に連続して逆の順序で発声します。

  1. 楽に出せる音程の地声を発声
  2. 発声したまま音程を上げていく(音階はつけず一気に上げる)
  3. 喚声点付近でミックスボイスになり、そのまま自分の最高音まで上がっていく
  4. 最終的にヘッドボイスになる
  5. 今度はそのまま続けて音程を下げていく
  6. 喚声点より下では正しい地声になっていることを確認する

前回の記事同様、途中で喚声点付近の音程で伸ばして希望する声質で発声できているかを確認しながら練習してください。

メロディーでのコツですが、下がるときは今まで地声で出せていた箇所を意識して必ず地声で出すつもりで歌ってみてください。正確にはその箇所もミックスボイスなんですが、「ここは地声だ」と意識することで披裂筋類に力が入り、力が抜けて発声が破綻することはなくなると思います。

細かい制御

これは細かい制御が出来るように長期間かけてトレーニングするしかありません。

この記事のまとめみたいになってしまいますが、今までに述べた練習を繰り返し、実際の歌で細かい制御を脳に刻み込んでいくしかないと思います。

  • 全ての音域をミックスボイスで歌う
  • 音程が上がるときは、喚声点より前(少し下の音域)にミックスボイスを意識する
  • 音程が下がるときは、今までの地声の音程は地声で出せていたことを意識して発声する
  • 最高音を含むフレーズは、始めの音からミックスボイスを意識する

また、以下の順序で繰り返し練習してください。

  • まずは、声質を無視してスムーズに音程移動できるようにする
  • 次に徐々に声質を改善していく
  • 声質が変わると音程移動のしやすさも変わるので、スムーズな音程移動・声質の改善を繰り返して全体の質を上げていく

発声練習、カラオケなどでのメロディーにのった歌の練習を繰り返して行うことで、徐々に意識しなくても今までの地声と同じようにコントロールできるようになっていくと思います。

おわりに

とりあえず、高音ボイトレとしては、以上で終わりとなります。

これらの記事を書くことで、僕自身の考えも整理でき実際の歌にも影響してきたので、僕にとっても有意義なテーマを書くことが出来ました。皆さんにも有意義な内容であれば尚嬉しいと思います。

僕もまだ完全にミックスボイスをコントロールできていないので、今後も気づいた点などがあったら新しい記事に追加したいと思います。

 

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